GetActiveObjectメソッドと同等の機能を.Net Core 8.0で実装する

はじめに

.NET Frameworkでは、System.Runtime.InteropServices.MarshalクラスのGetActiveObjectメソッドを使用して、既に実行中のCOMオブジェクトを取得することができました。

このメソッドは、指定されたクラス識別子(CLSID)に基づいて、実行中のCOMオブジェクトへの参照を取得する便利な機能を提供していました。

しかし、.NET Coreに移行すると、このメソッドは提供されておらず、開発者は代替手段を見つける必要があります。

.NET Coreは、クロスプラットフォームの互換性とパフォーマンスの向上を重視して設計されていますが、その結果として一部のAPIが削除されたり変更されたりしています。

GetActiveObjectメソッドもその一つで、.NET Coreでは直接利用することができません。このため、.NET Core 8.0で同様の機能を実現するには、P/Invoke(※)を使用してWindows APIのGetActiveObject関数を呼び出す必要があります。

この記事では、.NET Core 8.0でGetActiveObjectメソッドと同等の機能を実装する方法を詳しく解説します。具体的なコード例を通じて、P/Invokeを使用してCOMオブジェクトを取得する手順を示し、開発者がスムーズに.NET Coreへの移行を行えるようサポートします。

※P/Invoke…P/Invoke(Platform Invocation Services)とは、.NETアプリケーションからネイティブのアンマネージコード(主にCやC++で書かれたDLL)を呼び出すための機能です。これにより、.NETのマネージコードからWindows APIや他のネイティブライブラリの関数を利用することが可能になります。

前提条件

・開発ツール:VisualStudio2022

・開発言語:C#

・.Net FrameWorkから.Net Coreへの移行が完了している(詳しくはこちら)

現象

.Net FrameWork 4.8で作成されていたプロジェクトファイルを.Net Core 8.0へ移行してからビルドした際、「MarshalクラスにGetActiveObjectは存在しない」というエラーが発生した。

解決策

エラーが起きているプロジェクト内に新たな.csファイルを作成し、以下コードを書きます。

新たなファイルはここではPInvoke.csとします。

using System;
using System.Runtime.InteropServices;

namespace TQ84 {

   public class COM {

     [DllImport("oleaut32.dll", PreserveSig=false)]
      static extern void GetActiveObject(
                                            ref Guid   rclsid,
                                                IntPtr pvReserved,
        [MarshalAs(UnmanagedType.IUnknown)] out Object ppunk
      );

     [DllImport("ole32.dll")]
      static extern int CLSIDFromProgID(
         [MarshalAs(UnmanagedType.LPWStr)]      string lpszProgID,
                                            out Guid   pclsid
      );

      public static object getActiveObject(string progId) {
         Guid clsid;
         CLSIDFromProgID(progId, out clsid);

         object obj;
         GetActiveObject(ref clsid, IntPtr.Zero, out obj);

         return obj;
      }
   }
}

コード説明

①GetActiveObject関数の定義

 
 [DllImport("oleaut32.dll", PreserveSig=false)]
      static extern void GetActiveObject(
                                            ref Guid   rclsid,
                                                IntPtr pvReserved,
        [MarshalAs(UnmanagedType.IUnknown)] out Object ppunk
      );

  • DllImport属性を使用して、oleaut32.dllからGetActiveObject関数をインポートしています。
  • PreserveSig=falseは、メソッドがHRESULTを返さずに、例外をスローすることを指定しています。
  • 関数の引数は、CLSIDを参照渡しし、pvReservedには予約されているIntPtrを渡します。
  • 最後の引数は、IUnknownとしてマーシャリングされたオブジェクトをアウトパラメータとして取得します。

②CLSIDFromProgID関数の定義


 [DllImport("ole32.dll")]
       static extern int CLSIDFromProgID(
          [MarshalAs(UnmanagedType.LPWStr)]      string lpszProgID,
                                            out Guid   pclsid
       );
  • DllImport属性を使用して、ole32.dllからCLSIDFromProgID関数をインポートしています。
  • 関数の引数は、LPWStrとしてマーシャリングされたProgID(プログラム識別子)と、CLSIDをアウトパラメータとして取得します。

➂getActiveObjectメソッドの定義


 public static object getActiveObject(string progId) {
          Guid clsid;
          CLSIDFromProgID(progId, out clsid);

          object obj;
          GetActiveObject(ref clsid, IntPtr.Zero, out obj);

          return obj;
       }
    }

  • getActiveObjectメソッドは、指定されたProgIDを基に実行中のCOMオブジェクトを取得します。
  • まず、CLSIDFromProgID関数を使用してProgIDをCLSIDに変換します。
  • 次に、GetActiveObject関数を使用して、取得したCLSIDに基づいて実行中のCOMオブジェクトを取得します。
  • 最後に、取得したCOMオブジェクトを返します。

まとめ

.NET CoreでGetActiveObjectメソッドを使用するためには、P/Invokeを使用してWindows APIを呼び出す必要があります。これにより、.NET Core環境でも既に実行中のCOMオブジェクトを取得することが可能です。